紹介記事

ライプハウスについて過去に新聞や情報紙に紹介されたり寄稿したりした文章を、承諾を得て転載しています。

大阪自閉症協会広報誌「つなぐ」平成24年(2012年)11月号に掲載されました。

 「アートを使って、人生を作る・・・」   美術教室ライプハウス 大澤辰男

 

 最近は、障がい者アートが、アールブリュット、アウトサイダーアート、エイブルアート、ポコラート等、様々な呼び名で注目されていて、展覧会も多数開催されています。また、多くの作業所等の事業所でもアートのプログラムを取り入れているところが増えてきています。

 

 美術教室ライプハウスは、東大阪市にある小さな教室です。自閉症者(児)、知的障がい者(児)、健常者(児)の19人が受講しています。アートを学び実践することが生涯学習・ライフワーク・職業に繋がることを目標としています。

 

 福祉は、世の中に対して全体の底上げをしないといけませんが、アートの世界は、一部の優れた作品、作者だけが世の中に出て行ける世界です。福祉の世界とアートの世界は、システムとして矛盾しているところがあり、二つを結びつけることはたいへん難しいことだと言えるかもしれません。

 では、障がい者(ここでは自閉症・知的障がい者に限る)にとってアートをすることとは、どういった意味があるのかを考えてみたいと思います。

 

 健常者の場合、好きなことを学び、仕事を選択し、仕事や趣味に生きがいを感じ、人と人とのつながりの中で人間表現があり、10年後、20年後の自分を想像し、自分はこういう人間でありたいと願い、生き方を多面体で作り上げていくことができます。しかし、多くの障がい者の場合、自身だけでそのような生き方を作っていくことが困難です。多くが社会生活を送るための基本的なことに費やされます。仕事(所属先)も数少ない選択肢しかありません。また、将来を考える時も本人の意思とは関係なく、どうしたら生きて行けるか?という術の中からでしか見定めて行くしかありません。(少し断定的かもしれませんが…) 

 

 障がい者の人生も多面体で作っていくことが必要ではないでしょうか?

 それを実践するためのひとつとして、アートをすることはとても有効なことだと思います。

 

 私は13年間、障がい者にアートを指導していますが、受講生自身の変化とその環境の変化を目の当たりにしています。技術をしっかり教え、画材もきっちりとしたモノを使い、しっかり作品の評価をしてあげることが重要です。ただし、一番大切なのは自由に描かせてあげることです。作品の上達については、個人差は必ずあります。また、障がいの軽重もあります。しかし、アートの場合、障がいが重いからこそ逆に良い作品が作れたりもします。(良い作品を作れる資質は障がいがある無しに関わらず、個人の資質によるところはありますが…)アートをする場合、慌てなくてもいいのです。ゆっくり、ゆっくり変化していけばいいのです。50才60才になってから良い作品が作れるようになればいいのです。10年、20年、30年先の将来を考えて進んで行けばいいのです。

(ひょっとすると売れっ子アーティストになれるかも知れませんし…夢も持てます。)

 自身が変化して行っていることは、本人が一番理解しています。そこからモチベーションが出来て、目標・目的が生まれるのです。そして、アートを続けていると、必ず人が集まってきます。(ファンであったり、協力者であったり…)人間関係も広げて行くことができます。アートとは作品を通してのコミュニケーションです。

 私がしていることは、障がい者の生活のある一面を作っている補助エンジンにしかすぎません。

 

 最近では、障がい者アートが売れることもあり、アートとして質の高い展覧会が催されることも増えてきましたが、未だに多くの展覧会でよく耳にする評価は「がんばったねー」とか「楽しそうやねー」という作品の評価とはかけ離れた、『障がい者が描いた。作った。』といった障がい者の行動に対する評価です。このような評価の言葉が出て来る環境を変えて行かなければなりません。そのためには、障がい者の立ち位置を変えて行かなければなりません。障がい者アートと題した展覧会で障がい者しか出展できない展覧会に参加すれば、障がい者アートなのです。しかし、個人の名前で展覧会をすれば、障がいがある無しとは関係のない、個人としてのアートとなるのです。個展以外の展覧会も同じで、作品のテーマに則したタイトルで展覧会をすれば作品の内容で評価を受けることができるのです。

 障がい者が、本気でアートをすればするほど、作品を人前に出すということは、自身の生きて行く位置を獲得するための手段となるのです。

 

 障がい者である事実は変わりませんが、アートの世界では、本人の努力次第で、障がい者という生き方を超えて行けると私は信じています。

東大阪市布施地域の福祉情報紙「うえすとさいど」2012年7月号で紹介されました。

「うえすとさいど」は一般社団法人「ふせ支援ネットワーク」が発行している福祉情報紙です。教室に取材に来られ、2ページにも渡る記事を載せていただきました。 

―今、世界が注目 日本のアウトサイダー絵画

    三ノ瀬の美術教室「ライプハウス」に集う画家たち―

 

 「アール・ブリュット」「アウトサイダーアート」「ボーダーレスアート」などと呼ばれる絵画の流れが、いま世界で注目されています。昨年はパリの美術館で日本のこの分野の画家の作品が半年間にわたって多数紹介され、高い評価を受けました。滋賀県には、この分野の専門美術館もスタートするなど、作家のすそ野も広がってきました。私たちの町でも、昨年8月から小さな絵画教室が誕生、20人ほどの人たちが、画家を目指してガンバっています。

 

 近鉄布施駅から柳通りを南へ行った三の瀬の住宅街。気候のいい時は、通りに面したシャッターを押し上げたままで、数人のグループが熱心にキャンバスに向かっています。現代美術作家の大澤辰男さんが主宰する「美術教室・ライプハウス」です。
 教室の開講日は水・木・金の午後7時、土曜日午後2時からで、いずれも1時間30分。教室を訪ねたのは、5月中旬の土曜日午後。さわやかな季節だったので、シャッターは開けっぱなし。外を歩く近所の人が気軽に立ち寄ってのぞきこんでいきます。壁に掛けられた作品を見て、ちょっとびっくりしたような表情で、見つめなおします。どの作品も、細かな作業がびっしり詰まっていて、その力がひしひしと伝わってくるようです。
 ここ(注:紙面)に掲載した写真は、今年2月にブランドーリ商店街のクレアホールで「一般社団法人ふせ支援ネットワーク」が開いたイベント「バリアフリーな街 ふせ」で展示された10作品のうちの一部です。鮮やかな色づかい、細かな点をびっしり書き込んで形をあらわして行くスタイル、見る人たちをファンタジーの世界へ引き込んでいきます。
 ここに通ってきている人は、発達障害とか自閉症、ダウン症などの人が多いのですが、障害のない人もいます。最近通い始めた小学校6年生から39歳まで、いろんな年代の人たち約20人。中には、子供を連れて通ううちに、自分も絵を描き始めた母親も。
 絵の教室は1階ですが、2階は子供と一緒に来た親の談話室になっていて、お互いに子育ての苦労や絵の話などを話し合ったりと、これはこれで、家族にとって貴重な時間とスペースとなっています。
 「いま、4人展の作品を仕上げるのにがんばっているところです」と、大澤さんが土曜日のメンバーの一人を紹介してくれました。

 

 大澤さんが障害者の絵画指導をはじめたのは、平成11年に生野区の絵画教室の講師を頼まれたのがきっかけ。当初は、運営する側も家族も子供を一時的に預かってくれればいい…くらいの感覚だったようです。
 絵筆も絵具も使ったことがない子供たちに、赤、黄、青の色を混ぜ合わせて、さまざまな色ができることを教えました。緑や紫の新しい色が表れたことで、子供たちは興味を覚えていったといいます。

 

―絵具を混ぜ合わせて新しい色づくりに興味―

 

「子供たちが絵を描くことによって、いろいろ変化する。その過程がわかってとても面白い」という。こうした経験をもとに書いた論文が、この5月、「第13回日本自閉症協会顕彰事業」の自閉症支援実践賞の芸術部門かがやき賞を受賞しました。
 教室を三ノ瀬に引っ越したのは、昨年8月。西宮市や高槻市から通ってくる人もいるのに、肝心の地元の子供たちがいないのが少し残念そうです。
 大澤さんの方針は、展覧会を多く経験させることで、それも個展や少人数のグループ展が中心。教室単位でのグループ展はしません。教室全体でやると、全員が参加するので家族も「教室がやってくれるのやろ。がんばりや」と他人ごとになってしまう。本人も力が入らない。個展やグループ展は会場費も自己負担で、平均10万~15万円ほどかかるが、「家族みんなで、成功させてください」と説得する。
 家族も「好きな絵の道で身を立てることができれば」と願っているので、取り組みは真剣です。本人のモチベーションもあがる。障害のある人は一般的に幼いころから、ひとに褒められた経験が少ない。「だから、みんな親に褒めれれたいという思いが強い。まわりの人や知らない人にもほめてもらいたい。そう思ってるんですよ」と大澤さん。
 だから、家族の協力は欠かせない。障害者の場合、「アート作品を描こう」と思って筆を執るわけではありません。たいていの人が、そこらにある段ボールや広告のチラシの裏などに、わき出る思いを描きます。すごいスピリットのある絵を描いているのに、周囲の人は気がつかない。「なに? そのへんな絵は?」とやって、スピリットの芽を摘んでしまうことも多い。
 「障害者の絵」ということも、ことさら言わない。そういう枠をつくると、周囲もその枠からしか見ないし、自分もそこから脱出できずに、絵が面白さを失ってしまう。

 

―個展や神戸ビエンナーレ…展覧会に出展―
 

 個展は、大阪港区にある倉庫を改造した「海岸通りギャラリー CASO」などで開いている。大きな展覧会にも出展しています。
 これまで、2年ごとに開かれる「神戸ビエンナーレ」や韓国で開かれるアジア有数のアート展「KIAF」(韓国国際アートフェア)などの展覧会にも積極的に参加。自身も、現代アートの作品を手掛けているので、アート市場には詳しい。
 大阪市内で絵画専門の障害者作業所で作家を育てている「アトリエ・インカーブ」や滋賀県近江八幡市の「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」、「エイブルアート」の名前で障害者アートに力を入れている奈良市内の「たんぽぽの家」などとも交流があり、アトリエ・インカーブには、教室から1人を送り出しています。
 「アール・ブリュット」は、フランスのジャン・デュビュッフェという画家が名付けた分野で、「生(き)の芸術」と訳されます。「美術の専門的な教育を受けていない人が、伝統や流行などに左右されずに自身の内側から湧きあがる衝動のまま表現した芸術」という意味です。

 発達障害といわれる人の中には、こういうあふれる「生」のエネルギーの持ち主がけっこう見られます。昨年はパリの美術館で日本人の作品を集めた「アールブリュット・サンジャポネ」展が開かれ、高い評価を受けたことから、日本作家に注目が集まっています。
 大澤さんも、教室の子供たちの作品をいろんな形の製品に仕上げ、社会参加へつなげていきたいと意欲を燃やします。私たちの町で、アーティストたちが大きくライプ(実る)してほしいものです。

掲載文章ならびに画像の無断使用を禁止します。

連絡先

 TEL: 090-1674-2449(大澤)

 FAX: 072-921-1175

開講時間

 水・木・金曜 PM7:00 - 8:30

 土曜1    PM1:00 - 2:30

 土曜2           PM2:30 - 4:00